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「私」をめぐる対立――高橋源一郎×東浩紀トークショーレポート

2010-06-13(Sun)
昨日、ABC本店で行われた高橋源一郎さんと東浩紀さんのトークショーに行ってまいりました。

お二人とも僕が高校時代から読んでいた小説家・批評家(どちらがどちらを指しているかわかりづらくなってきましたw)でもあり、今なお追いかけている二人でもあります。

詳しいレポートはtogetterあたりに任せるとして(便利な時代になったもんだなーwそもそもニコ生もされてたし)、適当なレポートをば。
あっ、あと現地特典はtogetterではサイン会ってことになっていますが(サイン会もありましたが)、ここで言われていた特典は来場者に配っていた『悪と戦う』に関連する高橋源一郎さんの掌編のことですね。こんなものが頂けるとは思ってませんでした…。

結論から言えば、大変有意義なトークショーだったと同時に、お二人の考え方の違いが鮮明になったトークショーだったのではないでしょうか。

東さんと桜坂さんの小説『キャラクターズ』について東さん本人はこうおっしゃっています。

つまり、あれだと東浩紀っていうキャラクターは、僕が書いたものではないわけ、半分は。そうすると、作者が統御できないから、自立していくと。だからあれはキャラクターの自立の物語、単に。すごい簡単。それこそがメインのテーマで、だから作者が勝手に物語をばらばらにしてしまうことによって、最初は私小説的な私として始まったものが、むしろキャラクターになっちゃうよ、という話です。
「特別インタビュー 東浩紀の功罪」(『PLANETS vol.4』所収)



『キャラクターズ』は冒頭過剰なまでに自然主義リアリズムにのっとった「私小説」として描かれていますが、それを解体していく小説だと東さん自ら位置づけています。

それに対して、高橋さんはどういっているか。

斎藤(引用者注:斎藤美奈子):まあ、私小説のパロディをやるって言って立派な私小説になってるしね。だって肉体の叫びだもん。
高橋:宣言してパロディでやっても私小説になるってことは、私小説というものの強固さを証明していてもいるんだよね。
(中略)
高橋:日本の文学を振り返ってみれば、私小説の「私」も個人だけどキャラクターだし。
斎藤:田山花袋なんてみんなキャラクター小説じゃん
「ブックオブザイヤー2007 文藝編」(『SIGHT 2008 winter』所収)



つまり、私小説を解体していくというきっかけが「佐藤友哉が三島賞をとった」ことの対する義憤であり、『キャラクターズ』という小説自体が東浩紀に回収されていっているではないか、ということでしょうか。
というよりも、「私小説への抵抗」というのもの自体が東浩紀に回収されていていってるように僕には見えます。

さて、このトークショーで最初の面白い切り口になっていたのが、この問題でした。高橋さんは『キャラクターズ』そして、同じような図式を持つ『クォンタム・ファミリーズ』を私小説として積極的に評価しようとします。もちろん言うまでもなく、高橋さんも東さんも自然主義の作家ではないので(『ゲーム的リアリズムの誕生』的には高橋源一郎も自然主義なのでしょうがw、普通に考えれば)、一般的にいわれる私小説とは話がやや違うでしょう。「私」が作品内で出ている、描かれている小説といったところでしょうか。

その位置づけに対し、東さんはたびたび「僕は「私」を描くのはあまり好きではない。そうなってしまっただけ。エンターテインメント作家になりたい。あれは「私」を描く日本近代文学の伝統と接続するための戦略上の問題」と繰り返ししています。ちなみに、前に引用した「PLANETS」のインタビューにおいては「筒井康隆に、高橋源一郎に、読んでもらうため」とまでいっています。そして、それには成功しています。

それでも、読者の「リアル」を持ち出して「私」との接続をはかろうとする高橋さんに、東さんは「自分の現実を叩き潰すために書いている」という回答を返しているのが大変印象的です。東さんとしてはそれは「私小説」への抵抗であり、同時に高橋さんにとって見ればキャラクターズを書かせた「義憤」と同じような感情をとおして「私」と接続できたと確認できたものだったのではないでしょうか。

「私」にこだわる高橋さんと「私」への撤退をはかる東さんとの「私」をめぐるすれ違いはそのあとの高橋さんの話で鮮明になります。

高橋さんは「私小説は私的な空間なのだけれども、そこに読者を招き入れることによって、作者と読者がであっている。もちろん他者であるから理解できないけれども、コミュニケートする。私小説の場合、現実から登場人物がアバターとして登場する。これは公的空間に払う『贈与』みたいなものではないか。これが小説の『公共性』ではないか」と述べています。

つまり、高橋さんにいわせれば「私」を通して「公共」を立ち上げる、私を贈与することによって公に近づくと述べています。だからこそ、家族を含めてかなり返り血をあびているw、『クォンタム・ファミリーズ』は「私」性が強く同時に「公共」性も強いとして高橋さんは高く評価されています。

そのあと「政治と文学」の話において高橋さんは「政治と文学は本当に対立するのか」といったことをおっしゃています。

ところが、従来の発言を見ても、その後の回答をみても東さんは「政治と文学は切り離さざるを得ない」という立場です。この問題については最もラディカルなのは宇野さんで前掲書『PLANETS vol.4』の対談においても二人が意見が一致する問題、下北沢再開発問題を通して「政治と文学を切り離せ」とはっきり言っていますし、東さんもそれにほぼ同意しています。

ここでは東さんは「『公的』であることというのが日本では上滑りしているので、日本型公共のあり方として考えるべき」というにとどめています」そして「『公』と『私』を結ぶ情念の回路だったのが文芸批評だったのだけど、そうではなくなってきて、『公』は『公』で『私』は『私』でやるしかない」と返しています。

ポストモダン作家とポストモダン思想家が近代文学の伝統の「私小説」をめぐって対談するという奇妙な対談は、公との接続として「私」を考える高橋さんと「私」は「私」でやるしかなくてそこに"撤退"したいと考えている東さんという両者の違いが明確になったところで幕を閉じます。

僕としては世代的な問題もあって東さんの方がリアリティとしては近いです。このあたりの問題についてはまだまだ考えてみたいことはあるので、また機会があれば書きます。
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keiの100冊(途中)

2010-03-26(Fri)
ついったーで自分の好きな100冊あげるというイベントが流行っているので、僕ものろうと思った…が、中高時代の本が手元にないんですよね…。
なので、ホント適当です…何冊になるかもわかりません…とりあえず50は目指そうかな。

とりあえず、ミステリ編だけ完成したのでアップ。まさかミステリ界隈だけで30行くとは思ってませんでした…。

【ミステリ編】30

ミステリは中高の頃に読んでいたので読んだのはほとんどかなり前ですね。でも、いろんな意味で原点になっているのは間違いないと思います。

・本格 18

ハリイ・ケメルマン『九マイルは遠すぎる』ハヤカワ書房
…僕が考える最も完成されているミステリ。というか、ミステリはこういう形にしかならないのではないか、とか思ってた。

北村薫『六の宮の姫君』東京創元社
…「円紫さんと私」シリーズの中で選ぶならこれ。このシリーズのせいで国文学科に憧れがありましたwこんな素敵な卒論できればいいな…泣

バロネス・オルツィ『隅の老人』東京創元社
…もうここまで来たら言うことないですね。安楽椅子探偵物好きです。というより、情報が制限された状況で推理ゲームを楽しむってのが好きだったんですよね。それが正解かはわからないけど、ロジックを積み立てる。これもミステリの一つの面白さではないでしょうか。

エドガー・アラン・ポー『黒猫』
…黒猫こわい。にゃ。

加納朋子『魔法飛行』東京創元社

…あまり書いたことなかったですが、実は加納朋子さんのファンでした。北村さんに比べて等身大の主人公で好感がもてます。加納さんの連作短編は少しずつ各所に貼った複線が最後に綺麗な形で花開くのも魅力です。

西澤保彦『依存』幻冬舎
…タカチシリーズは『麦酒?』のようにミステリとして秀逸な作品もありますが、ザラリとした重さを含んだものもありますね。

西澤保彦『念力密室』講談社
…Howを念力というファクターをいれることによってWhydunitに転換。西澤保彦がミステリで行おうとしたことはもっと評価されるべき。

クリスティ『おしどり探偵』ハヤカワ書房
…クリスティで1冊選べといえばこれですかね。夫婦漫才面白い。…まあ『オリエント急行』もなかなか衝撃でしたが。『アクロイド』はまあ………衝撃だったけど…まあ…。

有栖川有栖『孤島パズル』東京創元社
…新本格第一世代モノをいれろ、という同調圧力を勝手に嗅ぎ取っていれてみる。初期の江神さん三部作はどれも好きです。

綾辻行人『迷路館の殺人』講談社
…もう一つ新本格から。

泡坂妻男『湖底のまつり』角川書店
…あまりにも綺麗な騙し絵。脱帽です。えろいけど。

パット・マガー『被害者をさがせ』東京創元社
…発想もさることながら、徹底したロジック、それも心理描写・情景描写があってこその推理小説。『七人のおば』もいいですね。

天藤真『鈍い球音』東京創元社
…野球ミステリの傑作。青井夏海さんの野球ミステリもパリーグ愛があふれていて好きですが、野球とミステリの絡め方ではこちらが一枚上手です。

鯨統一郎『邪馬台国はどこですか?』東京創元社
…アハハw歴史ミステリとしてはテイ『時の娘』や高木彬光『成吉思汗の秘密』なんかが有名ですが、とんでもっぷりはこれが一番ではないでしょうか。『時の娘』はイギリス史の知識がかけていて衝撃度があまりないのもありますが。

北森鴻『凶笑面』講談社
…追悼記念で。民俗学と組み合わせたミステリで、これまた面白い。「不帰屋」とかが好きでした。

笠井潔『サマー・アポカリプス』光文社・東京創元社
…矢吹駆シリーズの第二弾。アルビジョワ十字軍、南仏の特殊事情を絡めつつ、禄に思想もしらなかったのに思想対決でビンビンに興奮させられました。今読むとまた違うのかも。『哲学者の密室』は読んだけどわからなかったw現象学とハイデガーに未だに恐怖症があるのは『哲学者の?』のせいに違いないw

ヒラリー・ウォー『この町の誰かが』東京創元社
…アメリカの田舎町でおきた事件。全編インタビューで街の人々を描写し、かつ圧倒的なサスペンス感。さすがです。

歌野正午『葉桜の季節に君を想うということ』文藝春秋
…久々に本格でこのミス1位とった作品でしたが、まあやばいですね、これw

・ミステリ(その他)・ファウスト界隈編 12

恩田陸『球形の季節』新潮社
…『六番目の小夜子』は学校内の話でしたが、デビュー二作目は地方都市に拡大しています。都市伝説、地方都市は初期の頃の恩田陸を語るのには欠かせない要素で地味ですが中身も濃く面白い。

恩田陸『麦の海に沈む果実』講談社
…『ネバーランド』『蛇行する川のほとり』でなど恩田陸のもう一つのテーマが閉鎖環境における男女の微妙な心理劇でしょう。この不安定感、美しさは好きでした。

恩田陸『ロミオとロミオは永遠に』ハヤカワ書房
…恩田陸を語る上であと二つ欠かせないのが圧倒的なストーリーテーリング(結果、終わってみるとポシャッたりするw)とサブカル・SF的教養でしょう。そういった意味でこの『ロミオ?』は両方の要素を含んでいるのがこの小説。

氷川透『人魚とミノタウロス』講談社
…徹底したロジックで攻める氷川透は必然的にあるパラドックスと立ち向かわざるを得なくなる。それと立ち向かった結果、その先の相対主義に行き着いてしまう。今となっては若干苦笑するところでもありますが。

乾くるみ『Jの神話』講談社
…メフィスト賞ってこんな作品出してるんだ、と『六とん』とともに頭をなぐられた一冊です。

殊能将之『黒い仏』講談社
…アンチミステリの傑作。でも僕はこれはアリだと思います。

舞城王太郎『世界は密室で出来ている』講談社
…ミステリをガジェットとして、圧倒的にベタに青春を描いてきた小説。このストレートさは後の『好き好き大好き』などにもつながりますね。

舞城王太郎『熊の場所』講談社
…ピコーン!

佐藤友哉『エナメルを塗った魂の比重』『水没ピアノ』講談社
…いや、もう言うことないですね。はい。最高傑作です。

西尾維新『クビシメロマンチスト』講談社
…デタッチメント、コミットメントそのわずかな狭間の小説。あとみここちゃんかわいいけど、それすらもある種グロテスクなのかも。

西尾維新『きみとぼくの壊れた世界』講談社
…宙ぶらりんな欺瞞に満ちた世界をミステリをガジェットとして描く。それをグロテスクに肯定するということ。

モラトリアムと成熟――『ハチミツとクローバー』感想

2009-06-29(Mon)
なんか1週間に1回更新がデフォになってきました…。
気づいたらGoogle rankも落ちてたし。

ハチミツとクローバー (1) (クイーンズコミックス―ヤングユー)ハチミツとクローバー (1) (クイーンズコミックス―ヤングユー)
(2002/08/19)
羽海野 チカ

商品詳細を見る


羽海野チカキャラデザの『東のエデン』も終わったところですが、、『ハチクロ』読みました。まあ、激しく今更ですが。完結が2006年みたいですし。ただ、完結してから読んだからわかることも結構あったと思います。

で、感想。
想像以上に良かった!

最初、今一つ人間関係がつかめなかったりするんですが、読んでいくうちに片思いで繋がっている妙な人間関係だとわかってきます。それと同時に『めぞん一刻』の一刻館的なアパート共同体で繋がっている共同体だったりもする(まあ、美人管理人さんはいませんけどね)。

で、そこで続く時間ってのはモラトリアム的な循環構造がある。たとえば、森田先輩が卒業したのに、大学に残ったり、とか、真山が早々に大学を卒業したのにあのボロアパートにいたりとか。それと同じ構造が、恋愛にも指摘できて、全て片思いで循環している。

ネットでハチクロの感想を色々見ていたら、内田樹がこんなこと書いてました。

『ハチミツとクローバー』はまったく恋愛が先に進まないで、男子も女子もひたすらぐちゅぐちゅとべそをかくばかりなのであるが、この「時間が先に進まない」ことへの欲望の切実さはほとんど感動的である。でも、森田くんがアメリカから帰ってきて、ようやく8年生を終えて卒業したら日本画科3年生に編入・・・という展開には、さすがにびっくり。
そうなのか、諸君は時間を先に進みたくないのだね。
この退嬰性が同時代の若者たちの圧倒的共感を得ているという事実に私はふかい興味をいだくのである。
『ハチミツとクローバー』全巻読破中
 内田樹の研究室


これは4巻時点の感想なんですが、前半部分のハチクロというものは「循環する時間と固定化された共同体」に支えられていたんだなー、と思います。
まあ、実際ハチクロの前半はラブコメマンガとも読めるわけで、ひょっとしたら作者はこのまま円環的な時間構造のまま終わらせるつもりだったのかもしれない(今のオタク系メディアにはこの手の「終わらない学園生活」を描いた作品はごまんとある)。

でも、だらだらと続くモラトリアム的空間と片思い。でも、それには必ずいつか終わりが訪れることだというのは決定してる。そして、作者はそれをちゃんと描こうとした。

比較に出して申し訳ないんですが、『のだめカンタービレ』だと、国内編から巴里編になったところで、登場人物は一新されるわけですが、結局二人の関係はずっと延長線として続いていく。それに対して、『ハチクロ』は片思いの繋がりと学生アパートの繋がり、という脆い物で出来上がってたりして、その性格ゆえに「終わり」というものが決定付けられていた、と言ってもいい。

それを象徴するのが竹本君の北海道一人旅。まあ、帰ってきた以降の確変っぷりは半端なかったりしますが(笑)。竹本君の視点で物語を見た場合、「成長小説」ともいえる要素も入っていて、「モラトリアムの終わり」と「成熟」という要素が最後数巻に詰め込まれていたりする。

まさに、20代前半と言う時期に不思議なモラトリアムを与えられた若者たちのビルドゥングスロマンとして読めるのではないんでしょうか。

これは余談なんですけど、「卒業」ってテーマで思い出したのは、実は『あずまんが大王』。円環的な時間を基本とする空気系マンガがどう"終わり"を描くかという点で、あずまんがの最終回は素晴らしい。これからも一緒だよ!というテーマはがっちり打ち出して終わる。
それ自体はすばらしくて、終わらせきれなくて、サザエさん時空を続けた挙句、大学編までやろうとしたフォロワーである某萌え4コママンガよりいいと思います(笑)。

でも、やっぱり思うのは「みんな仲良くー」といつまでも行かないよなーということ。実際、『ハチクロ』だと地理的な距離っていうファクターが時々入ってくるんですが、ちよちゃんもアメリカ行っちゃうわけだし、そううまく行かないだろなー、と。となると、あのラストってのは、ある種の寂しさも含んでいたのかなー、とか『ハチクロ』読んでて思ってました。…つーか、本当に余談だwww

でも、実際今のオタク的想像力がどう「終わり」を描くか、というかそもそも"終わりというものを描けるのか?"っていう疑問は僕の中で結構あったりします。戦闘物だったら、ある種の定型があるので描けるんだけど、空気系はどうするんだろう。「終わり」はなかったことにするのか。それもそれでありだとは思いますけどね。

『シャングリ・ラ』感想

2009-04-11(Sat)
普段他人様のブログも含めてRSSリーダ上でしか読まないせいで今更気付いたんですが、FC2ブログが高速化(なんじゃそりゃ)のかわりに最新記事に広告が表示される仕様になったそうです。FC2ブログの広告の少なさには利点であると同時に、心配もしていたので、そのままにしておこうかなぁ、と思います(低速化すれば消すことも出来るらしいです)。

*東のエデン

この間、ノイタミナ枠の新作アニメ『東のエデン』見てたら、OPが知っている曲でずっこけた。OASISとタイアップなんて聞いてねーぞー(あとで調べたら3週間ぐらい前からニュース出てました)。最近、なんかOASISの名前をよく聞きますね。
アニメ自体は1話だけでは何とも言えない感じでしたが、監督名だけで継続視聴です。

*『シャングリ・ラ』

シャングリ・ラ 上 (角川文庫)シャングリ・ラ 上 (角川文庫)
(2008/10/25)
池上 永一

商品詳細を見る


4ヶ月前から読むと宣言しておきながら、ようやく読みました。というか、アニメがもう始まっちゃっているよ…。
この手のエンタメ小説を読むのは久々だったので「こういう文章の書き方、懐かしいなー」とか思いつつ読んでいました。にしても、上下巻それぞれ500ページは長いなぁ。

沖縄出身の池上永一の作品はマジックリアリズムと呼ばれることが多いですが、今回は別にマジックリアリズムではなくSF系の作品です。が、マジックリアリズム作家と呼ばれるように至った池上永一の価値観といったものが、随所に反映されていている作品だと思います

この世界では、温暖化防止のために炭素税が導入され、東京は人工地盤を建設して、地上を強制的な森林化して、その結果地上には大量の難民が発生する…という展開。

主人公は森の飲み込まれそうになっている街とその街の反政府ゲリラを治める美少女。どことなく『ナウシカ』を思い出す人は多いと思いますが、現代のSFの美少女は昔ながらの生活なんてやりません。実はやり手の投資家だったり、ブランド物のバッグ買ったりします(笑)。

CO2が取引される、とか、CO2が「実質炭素」と「経済炭素」という概念に別れ、それを使って金儲けをしようとするカーボニストと呼ばれるような人たちが出てくる、といった感じでこの本が出た時(2005年)の時事問題をこれでもかっ!とつぎ込んでいるのも特徴だと思います。

この物語自体、社会のパラダイムシフトを一つのテーマにしているところがあって、池上永一本人が『SIGHT』の先日のインタビュー記事に見られるように「価値観の反転」を散々体験してきた人生を送ってきており、それを反映した作品になっていると思います。
ちなみに、そのインタビュー記事で「シャーマニズムと精神医学は説明するタームが違うだけ」という価値観を語ってましたが、ラストもそんな池上永一の価値観が反映されたものになっています。

マジックリアリズム作家がそのマジックリアリズムを作り上げている価値観でもって、SFを書いた作品っていうのが正しい表現だと思います。

なので、文庫版の解説の筒井先生が「リアリズムではなく、様々なものの『過剰さ』がこの作品の特徴」とおっしゃっていましたが、僕はその過剰さこそが池上永一的なリアリズムじゃないかと思います。

あとこれは余談ですが、天皇の描き方の無邪気さにびっくりした。ここまで素直に捉えられるのも凄い。

コミットメントモード村上春樹

2009-02-18(Wed)
maria

何かを間違えて買ってしまった…。シングルCDなんて買ったのはいつ以来だろう。
と思ったら、うちのPCのCD/DVDドライブが不調で読み込めません!まあ、色々手は試して見ますが…。うち、CD再生機もDVD再生機もPCしかないんですよね…。
まあ、CDウォークマンを実家から持ってきた気がするので、探せばどっかにあると思いますが、どこにしまったっけな…。

*村上春樹問題

村上春樹がエレサレム賞受賞した当日はこのブログ史上最大のアクセス数(1日200越え)をはじき出しました。いや、大したことも書いてないし、そもそも受賞する前に書かれた記事なので、まったく検索から来た人が求めるものに合致してないんですけどね。
Google先生しっかりしてよ!(まあ、そんなこと機械に判断しろっていうのが無茶ですが)

壁と卵 池田信夫blog
村上春樹のスピーチを訳してみた(要約時点)進化版しあわせのかたち
もしその「壁」が――その壁にぶつけられる「卵」が壊れてしまうほど――固く、高いものであるならば、どんなに「壁」が正しくとも、どれほど「卵」が間違えていたとしても、僕は卵のそばに立つでしょう。

かの池田信夫先生が絶賛しています!そっちの方が衝撃(笑)。

コミットメントモードの村上春樹という、今の"村上春樹"というものを印象付けたスピーチだったと思います。「村上春樹的」ではない、という感は否めませんが(笑)、僕も素直に絶賛したいと思います。

そういえば、「the system」を朝日新聞は「制度」と翻訳していましたが、ここは「システム」でいいと思います。

事前に、色々とありましたが、このように春樹が受賞式に主席し、イスラエルの政策やパレスチナの武装勢力を批判する(ということに日本のマスコミの報道によると解釈されるっぽい)という展開に終わりました。
そしてそのことへの絶賛がネット界を支配するという、予想通りなのか、ある意味不思議なのか…。

実際、口角泡を飛ばして、イスラエル批判をしたら、失望する春樹ファンなんてどこにもいませんでした…。まあ、ひょっとしたら口角泡を飛ばして批判したわけでもなく、スピーチ自体、村上春樹的な比喩、に包まれていたし、コミットする対象も「世界最強の価値観」(元ネタのブログ)なので、そういう人がいないだけかもしれませんが。

でも、本当にここまで批判が出ないのが意外だった。僕がネット上で見た批判なんて、ほんの数件。
こういう態度はもっと批判が出てもおかしくないと思っていたので。
正直、僕自身、こんな理想論を言って、通用する世の中だと思っていなかったので。それとも、村上春樹だからこそ許される技なんでしょうか。社会学の最終切り札(笑)・「人類教」にすら見えなくもないのに…。

「壁と卵」――いくら「壁」が正しいとしても、「卵」を支持する――非常にいいと思います。ある種の決断を含んでいるような気もします。が、具体的にどういうことなんだろう。『アンダーグラウンド』のように人間を描き続ける、ということなんでしょうか。
これがイスラエル・パレスチナ問題だったから、これだけの支持を集めたのかもしれませんが(*1)、もっと意見が分かれる問題だったらどういう回答を出したのだろう。そして、みんなどのように反応したんだろう。
それこそ、派遣問題とかに――それこそ村上龍が語っているような問題――どのような態度をとるんだろう。

あと、もう一つ気になったところ。

I am grateful to you, Israelis, for reading my books. I hope we are sharing something meaningful. You are the biggest reason why I am here.


ここの部分を皮肉と言っていた人がいましたが、そんなわけがない。そのままの本心でしょう。
どこの国でもそうであるように、イスラエルの国民が、全員同じ思想を持っているわけじゃないわけで、パレスチナと和平を進めるべきだという人たちもそれなりにいるでしょう。

リベラル派とアカデミズム・文壇は基本的には結びつきやすいので、過去の受賞者から見ても(だってソンタグにあげてるんだよ?このままノーチョムとかに上げそうな勢いだよ・笑)、おそらくリベラル派に人たちが村上春樹に賞をあげ、授賞式に出席してるんだと思います。イスラエルを批判するソンタグの講演でも拍手が起きたらしいし、ソンタグの講演にも確か似たような文章あったはず。
なので、皮肉でもなんでもなく、そういった事情がわかった上での本心でしょう。

*1…まずこれがビックリ。そんなにみんなガザ空爆に反対だったのか、というのが驚き(そりゃ、僕も反対だが)。イラク戦争のときのイラク戦争支持者のような人がもっといると思っていた。それなのに、大きな世論という形で表出してない気がする…。

本ブログはXP+IE7、Firefox3、Safariで一応確認しています。
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プロフィール

Kei

Author:Kei
文学部卒業して、冴えない仕事を冴えない顔でやってる。スバル持って北海道に移住したい。

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