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韓国GP騒動の背景――F1を知らない人のためのF1裏ビジネス入門

2010-10-25(Mon)
韓国GP無事終了しました。
あれに荒れたレースでしたが、特に怪我人もなく終わり一安心(個人的にはペトロフリタイア時のマーシャル対応が気になりましたが)。レッドブル勢二台リタイアでアロンソ優勝、ついにチャンピオンシップ1位と今年のチャンピオンシップを大きく左右するレースになりました。

さて、グランプリ週末直前まで建設を続けており、未完成部分も多く安全性の問題が指摘された韓国国際サーキット。ハム速などでもとりあげられるなどネットでも大きく話題になりました。小林可夢偉の日本GPの活躍よりも隣国のサーキットのネタの方がネット界ではニュースバリューがあるというのはすごく残念なことですが(そういうところだってことはわかっちゃいるけどね)、色々質問されたりもしたので韓国国際サーキットのこの顛末の裏にあるF1のビジネス事情をF1ファン以外向けに軽くまとめてみました。

F1ファンにとっては公然の秘密状態の話でもあるのですが。

*韓国GPが遅れた理由

韓国国際サーキットの建設が遅れた理由はKAVO(韓国GPプロモーター)に言わせれば7月8月の天候不良だそうで、これが嘘だとは思いませんが90日前サーキット査察ルールを適用すればすでに7月には完成しておかなければならないはず。もっと根本的なところに問題があったと考えるべきでしょう。

そもそもKAVOとは朝鮮日報の記事によれば外部から委員を招こうとしたけれども失敗して組織の大半を全羅南道の職員が占めるというダメダメの第3セクターみたいなもの。実際、韓国GPの締結の契約の際の記事に全羅南道の知事の名前を見て取ることが出来ます。

ちなみに、韓国国際サーキット周辺に街の建設を計画しているらしく、韓国国際サーキットの後半部分(いわゆるセクター3)は市街地サーキットのように壁で囲まれています。将来的には本当に半市街地サーキットにする予定らしいですが、現在は単なる空き地・田んぼです。

こういったことから考えて、全羅南道が町おこし、地域発展として積極的にサーキット開発、F1誘致を行ったと推測できます。

では、なぜサーキット建設が遅れたのでしょうか。これは前記の理由はあれど直接的には単に資金調達に手間取ったと推測できます。2009年8月30日に発表された2010年暫定カレンダーには韓国GPの名前はありません。そして、2009年9月1日に資金調達成功の記事があり、2009年9月22日に発表されたFIAのプレスリリースでようやく韓国GPの名前を見ることができます。
06年に契約していたわけですから本来なら8月の暫定カレンダーに載ってもおかしくないと思いますが、資金調達に昨年9月の段階で手間取っているようです。KAVOに外部から委員を招こうとして失敗したという経緯から、民間資本が予想以上に集まらなかったことが最大の原因ではないのではないか、と推測できます*1

*1…政権交代してF1関連予算が減らされたことが原因とする説もありますが、ソースは発見できず。実際F1支援法は09年に通っています。件の朝鮮日報の記事からはもっとも支援の約束自体は07年にとりつけていたようですが、文化体育観光省はF1招致に懸念を示しているという内容もみてとれます。

*F1開催はもうからない

では、なぜ資金集めに失敗したのでしょうか。それには主に二つの理由の複合と考えられます。

1.韓国国内のF1人気、モータースポーツ人気の低さ
2.F1開催サーキット側は儲からないF1ビジネスの構造

1.韓国のモータースポーツ

今、F1ドライバーを輩出している国の多くは国内にF3というF1の下位カテゴリーを有しています。イギリスF3、ユーロF3(フランスF3・ドイツF3を統合)、日本にももちろん全日本F3というのがあります。ここからF1直下カテゴリーであるGP2(昔のF2に相当、ちなみにF2は別に存在する)などを経由してF1ドライバーになっていきます。その他にも日本にはフォーミュラニッポン(F2などと同格)、SUPER GT(ツーリングカーレース、一番人気がある)、二輪レースなどがあります。
ところが、韓国にはF3格のレースは存在しない様子です(多分)。
過去に行われていたもっとも大きいなレースはF3世界一決定戦であるマカオグランプリのあとのおまけ興行としてコリア国際F3程度の様子(99年?03年開催。ちなみにこれは今年復活するそうです)。これは噂ですが、F1放送すらなかったとか…。

そういう事情でどうやら韓国のモータースポーツ文化はあまり浸透してないと結論付けることができそうです。実際、そういった事情で韓国GPは観客動員が望めないので地元の市がタダ券を配布してそれをめぐってまた一悶着あったなんていう情報もあります。

では、なぜモータースポーツ文化が浸透してない韓国でF1を開催することになったのか、というか何故できるようになったのか、という問題が浮上します。変な言い方ですけど、韓国国民のF1への関心度は高くないし、モータースポーツが好きだからこそF1を誘致したわけではない。そうした状況の中でF1韓国GPが成立した背景には現在のF1ビジネスがあります。

2.F1ビジネス側の問題

F1はどういうふうに収入を得ているのかでしょうか。F1を統括しているのはFIA(国際自動車連盟)になるわけですが、ビジネス面で統括しているのはF1界をすべてを仕切る男・バーニー・エクレストン率いるFOM(フォーミュラワン・マネージメント)になります。

そして、このFOMの収入源としては大きな二つの柱が在ります。ひとつは放映権料、そしてもうひとつは開催権料です。

放映権料はわかりやすいですね。各国の放送局に独占放送権を高額で販売する形です。日本ではフジテレビ、英国では2009年からBBCが放送しています。では開催権料とは何なのか。

これはF1を開催したいサーキット、プロモーターの側がFOM側に払うお金のことです。一般的なスポーツでは施設を使用する側が施設使用料を施設管理会社側に払うわけですが、F1では施設管理者側が施設を使用する側にお金を払うのです(細かく言うと違うんだけど省略)。たとえば、鈴鹿サーキットを運営するモビリティランド(ホンダの子会社)は開催権料をFOM側に支払って鈴鹿で日本GPを開催しています。

この開催権料、意外と洒落にならない金額であり2008年の記事ではF1の総レース開催権料収入は4億350万ドル(約435億円*2)におよぶとの記述があります。この年は年間18戦なので1GPあたり平均24億円をサーキット、プロモーター側はFOMに払っていることになります*3。では、この高額の開催権料をサーキット側はどこから回収するかというと、チケット代になります。
もちろん、チケットは完売近く売れなければペイできませんし、サーキット側に出る利益なんてそれほど多くはありません。

たとえば、日本GPは1987年の以来*4毎年鈴鹿サーキットで開催されてきましたが、07年08年と富士スピードウェイにうつった事は広く知られています。その移った最大の理由は別にF1側が二つのサーキットを審査し富士スピードウェイの方が素晴らしいと判断したわけではなく、富士スピードウェイ(トヨタ系)側が高額の開催権料を提示したからにすぎません。
その結果、富士スピードウェイは07年の大会運営に失敗、08年観客を減らした結果、採算がとれずに08年をもって撤退ということになりました。

これらの事から三つのことが言えます。
1.F1はその国でのF1の人気度、モータースポーツ文化とは関係なしに、お金さえあれば開催できる。(ちなみにサーキットはFIAお抱え技師につくってもらう)
2.サーキット、プロモーター側はF1側(FOM)に高額の開催権料を払っているので、F1側はお客さんの入りなんてまったく関係がない。損をするのはサーキット側だけ。
3.そして開催の新候補地は増えてくれれば増えてくれるほど、開催権料を吊り上げることが出来るのでF1側は儲かる。

こうしたF1側のビジネスがモータースポーツにあまり縁のない韓国にGPを成立させたといってもいいでしょう。

しかしながら、F1人気が低くモータースポーツ文化が根付いていない韓国ではペイはおろかKAVO側、プロモーター側に大損失がでるのは見えています。そうした事情が民間資本を遠ざけ資金調達の遅れ、そして工事のおくれを招いたのではないでしょうか。そんなことがわかっていつつも招致するあたりはさすが行政といったところですが(笑)。

以上まとめると、
韓国にはモータースポーツ文化は定着しておらずF1の健全運営を支える土壌もないが、地域開発として行政がごり押しした結果が、あのような顛末になったのではないかと推測できます。

*2…面倒なので1ドル=100円で計算。もしかしたら円高のおかげで鈴鹿サーキット側は助かっているのかもしれません。
*3…グランプリによって金額は違う。新規サーキットは30億円とも40億円ともいわれる。これは余談だがホンダはF1のために年間300億円つぎ込んでたとか。
*4…ちなみにこれはF1初上陸ではない。1976年、1977年にも富士スピードウェイでF1が開催されている。

*第二、第三の韓国GPの可能性

実はこれは韓国だけの話ではなく、新しく始まったどこもグランプリでは似たような構図を持っています。たとえば1999年から開催されているマレーシアGPでは旗振り役になったのは当時の首相・マハティールだったりしますし、2014年からの開催がつい先日決定されたロシアGPでは実質支援したのは国営企業やプーチン首相の名前まであがっています。
また中国GPの有料観客数が3万2000人、トルコGPが3万6000人に終わるなど(ちなみに鈴鹿は09年21万人)、モータースポーツが根付いていないところで開催して空席だらけという現象は韓国だけのものではありません。

こうしたモータースポーツ文化が根付いてない新興国が行政の支援を得て、"F1グランプリを開催できる国"というブランドを求めて、高額の開催権料を払って開催するということがたびたびあります。それと対照的に、先進国では行政の支援には限界があるため(たとえばオーストラリアGPなどは赤字のため、税金の無駄遣いなどと度々批判されている)、長い伝統を誇るサーキット、モータースポーツが盛んな国から次々とグランプリが消滅、あるいは消滅の危機にあります(現在フランスGP、アメリカGPは行われず、またベルギーやカナダも1年休止をはさんでいる )。

こういった背景がある以上、第二、第三の韓国GPは生まれかねないともいえます。こうした文化よりもビジネスを重要視し、スポーツとしての不自然さを保ったまま今後もF1はやっていけるのか、大きな不安材料となっていくのではないでしょうか*4。

*4…個人的にはこうした仕組みはスポーツが資本主義のダイナミズムをうまく利用していって成長しているわけで、大変興味深いし面白いと思っていたりしますがw
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